「目指せ!狩りガール」のシーズン1で狩猟者となり、デビューの北海道で見事な猟果に恵まれたありちゃんですが、今夜は東京都内のある店で、久しぶりにだいぞう師匠と待ち合わせ。その後の狩猟生活のあれこれを、ちょっとご報告するようです。では、のぞいてみましょうか……。
どうだった、狩りガールになってみて?
そうですね……そもそも、山に行くのも面白いし……その前に、なんで今夜はこの店に来たかというと……わたしが「狩りガールになる!」って決めたのが、ここだったんですよ。
そうだったっけ……なんか、遠い昔だな、もう……(笑。
この店の、あのへんの席だった気がする……。それまでも話は何度か聞いたけど、最後はここで心を決めたんだ。
実際に狩猟をはじめてみて、率直な感想は?
いやあ、いろいろ意外なことがたくさんあって……ひとつは、わたし射撃が好きなんだってことに気がついたんです。まあ「わりと筋がいいよね!」なんていわれて、その気になってるだけかもしれないけど、当たるようになったら、集中している感じが気持ちよくなって。あとは、メンタルが重要なんだってことも……というか、長野で竹入さんに教わったことが、現場に行くとよくわかる!
クリアしなければならないことを、ひとつひとつきちんとクリアしていくと、最後には「現場で引金を引く」ということだけを残せるんだよね。
あと、冷凍庫がたいへんなことになってます(笑。それで、猟に出た次の火曜日には、会社のお弁当にローストを「かたまり肉」のままで持っていくようにしてるんです。オフィスの冷蔵庫に入れておいて、昼休みに弁当女子が集まったところで切り分けるの! みんなでワーッと食べるの、楽しいんだ!
それはいいね。
それでも猟期の半ばを過ぎたら冷凍庫のキャパシティがなくなってきて(笑)物々交換もしてます。獲った肉を分けると、みんな「お金を払うよ」とかいってくれるんだけど、まあ値段は付けられないからね~。それで、分けたお肉が果物になったり、野菜になったりしてる(笑。
冷凍ストッカー、買ったの?
いや、ふつうの冷蔵庫のままだから、がんばって食べないと……(笑。年末に友だちを呼んで、大忘年会で一気に減らしましたけどね。
巻き狩りメインだと獲物を分けるから、まあ自分の取り分としても2キロとか3キロとかだけど、シーズンごとに北海道に行って、単独で流し猟でもするようになれば1頭を丸ごとだから、まあ冷凍ストッカーがないと無理だね。
そうですね。初めて猟に出たときのシカも、半年くらい食べてた気がする(笑。
じゃあこれからハンティングをはじめるとか、今シーズンからはじめた新米ハンターへのアドバイスとしては「冷凍ストッカー買っとけ!」かな?
「買っとけ!」じゃなくてもいいんだけど(笑)猟期の前に冷凍庫は空けておかないと、たいへんです! それから、もっと大事なのは、食べたい人を見つけておくこと。獲った肉をいっしょに食べてくれる人がいた方が自分も楽しいし、物々交換もうれしいよ!
「食べる口を作っておく」ということだね。もともと「山分け」という言葉があるように、狩猟は「おすそわけ」の文化だからね。自分で解体すると衛生面での心配もあると思うけど、そこは家庭菜園の野菜でも同じだから、十分に配慮してきちんとやれば、だいじょうぶ。
で、今期の出猟はどんな感じかな。
ここまで……静岡2回と、東京2回と、合わせて4回ですね。まだあと少し、猟期ありますからね。ここまで月イチか、それ以上のペースです。
おお、けっこう行ったね。よくやってる! シーズンに4回って、上出来だよ。じゃあ最近の猟の様子を聞かせてもらおうかな。
今年に入ってからは、伊豆の天城に行きました。その日は小正月で「どんと焼き」だったので、日の出前から集まって、塞の神をお見送りして……で、狩猟小屋で作戦会議をして、出猟したんです。そのときは初心者の人も何人か来ていて、わたしちょっと先輩なんだけど(笑)まあ「わたしも初心者なんで……♡」と、優しく対応しました!
で、猟場ではどうだったの?
そのときは、スタートから10分くらいで発砲音がして、無線で「そっち行ったよ!」といわれて、ドキドキしてたんです。それで、音が聞こえて振り向いたら、シカとイヌが走り抜けていって……。そのとき、たぶん20~30メートルくらいで、木と木の間にピャっと出たんです。とっさに構えたんだけど、撃てなかった……。無線で「行くよ!」といわれてから、本当にすぐ来たんだけど、逃したんで「すみません……」と送信して……。
出たのが後ろだったんだね。
[編注]このときありちゃんが参加したのは「巻き狩り」というグループ猟。作戦にしたがって山を行く「勢子」とイヌが、数か所で待ち構えている「射手」のところへ獲物を追い立てていきます。
もっと知りたい人は「目指せ!狩りガール」シーズン1へGO!
直前に「行くよ!」と無線をくれた人の位置取りや、イヌの声なんかで「後ろだな」とは思ったんだけど、向きを変えたときにはもう間に合わなくて……。獲物は走ってたし、あまりにも一瞬でしたね。自分としては「あ、これは撃たなきゃダメだろ」という感じでした。ランニングターゲットの射撃練習とかしてたんですが、肝心の「心持ち」が……。タツに入ってからのシミュレーションとか、そこの準備が不足でしたね。やっぱり、瞬発力だけじゃ撃てない。本当に、現場に入ってからの心の準備が大事、と思ったなあ。
現場ではイメージできてたの?
シミュレーションもしてたんですけど、まあ獲物が出る確率の高い方で考えてたわけで、そしたら後ろに出たんですよ(笑。配置や地形としては、そちらも撃っていい方角だったんで、まったくの無警戒というわけではなかったんですけど。というか、まず「こっちに出るよ」といわれた方向があったわけだけど、背中側にも「出るかも」という方向があったので、座る位置を変えて、両方が見えるように体の向きを調整してたんですけどね。
その段階で「10:0」から「9:1」くらいの意識にはなってたんだね。
でも、実際に獲物が後ろに出たら、イメージが追いつかなくて、矢先の確認も間に合わなくて、発砲できなかった……。
矢先が確認できなければ、撃てないのもしかたなかったね。あとは「10:0」を「9:1」とか「7:3」にして、メインじゃない方から獲物が現れる確率がどのくらい上がってきたのか、無線の内容やイヌの声を聞きながら、どのくらい「場が読めるか」だよね。
そう……なんだけど、初めて行った場所では、なかなか難しいんだよなあ……。でも、もういちど同じ状況になったら「わたし撃てる!」って思いました!
「次だったら撃てるな」と思えるのって、大事だね。それがないと、何回やっても撃てないままだからね。
通っていれば山のことはわかってくるけど、獲物が出ないと撃つ機会もないわけで、撃てないままなんですよね~。そこは運もありますね。
撃てるチャンスは運しだい、か……それはそうだね。だけど、撃てるチャンスをものにするかどうかは、事前の準備!ということも、つかんだみたいだね。矢先の確認や、獲物が動く方向の予測、心の準備などなど、なにかの不安があったら、撃てない。これは、鉄砲を扱う狩猟者として正しいことなんだ。そして、その不安をどこまでなくすことができるかが、高い猟果につながるんだね。とても大事なことだよ。
まあとにかく、そのときの獲物はシカが1頭でした。で、解体は「やっていいよ」といわれて、ほとんどひとりで解体したんですけど、初の野外解体でした。それまでの解体は、屋外ではあってもテーブルがあったんで、なにもないところでの「地べた解体」は、汚さないようにするだけでたいへんで……難しかったなあ。別に川のそばでもなくて、現場で血抜きして、内臓摘出してちゃんと埋めて、それを下ろしてきたんです。
それは、そろそろいいナイフが欲しくなるね。
それで、獲物を解体して、その日はシカのタンをもらって帰りました。丸ごともらったのははじめてで、なんか「やった~!」とか思いながら(笑)皮付きでステーキにしたの! ブラシで洗ったりするのが面倒なのか、皆さんあまり持ってかないようで……美味しいですよね、シカのタン。こんな美味しいものをひとりり占めしていいんだろうか……と思いながら(笑)しっかりいただきました。
さすが「おいしいのはじまり」を追ってるだけのことはあるね(笑。で、射撃練習はどうかな?
あの北海道の猟で前のシーズンが終わって、それから……6回ですね。シカやイノシシなんかの大物猟がしたいわけで、内訳はほぼスラッグです。散弾を撃ったのは長野の竹入さんのところと、あともう1回くらい。で、4回くらいはランニングターゲットでした。まあ師匠の趣味なのかもしれないけど(笑。でも、ランニングターゲットは面白い! 静的は「自分の弾がどこに行くのかを知る」という意味では大事だけど、実猟に近いという意味では、ランニングターゲットだと思う。北海道で流し猟をするのでもない限り、獲物が止まっているようなチャンスって、めったにないからなあ……。
なるほどね。……なんか、いいじゃないか。
射撃は、行くと慣れますからね。何回も、何回も行っているうちに、だんだん、ちょっとだけ、ちょっとずつ……でも、慣れてきました! で、いまはその師匠についていく感じです。師匠と射撃場に行くと、すごく上手い人たちにも会えて、そこでもいろいろとお話が聞けるんです。
師匠を見つけるのって大事だね。
そう、重要ですよ! わたしなんか、射撃練習も連れていってもらって、指導してもらって、猟の日は朝も4時とか5時とかにクルマで迎えにきてもらって、巻き狩りのチームもあちらこちら紹介してもらって……もう師匠がいなかったら、狩猟生活が成り立たない(笑。お世話してくれる人がいるからこそ、の新米ハンターです。
いやあ、いい先輩に恵まれたもんだ。それも「狩りガール」の人徳だね、ありちゃん(笑。
……というか、本当はだいぞう師匠が連れていってくれたらいいのに……(怒。
いやあ、実はなにかと忙しくてね……ごめんごめん。ともあれ、今シーズンもあと少しだけど、安全に気をつけて、正しく、楽しく、そして美味しく! がんばってね。
おすそわけ、持ってきますよ〜!