VOL.2-1

年寄り猟師の説教には、トゲもあるけど知恵もある。その教えが、猟の安全を支える。[長野編:1/3]

2014年10月20日
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第2回は、長野県営総合射撃場に竹入正一さんを訪ねます。今回の達人は、競技射撃の選手よりも弾数を撃っているんじゃないかと思うほどのヘビーシューター。フォームなどを見ていただけるとあって、狩りガールのありちゃん、今日は愛用の散弾銃を持参です。

その一方で長野県猟友会の副会長として、また地元である上伊那猟友会の会長として、若手の指導やベテランとの融合、狩猟ノウハウの公開や新しいわなの開発など、とにかく頭の柔らかい活動を率いているのも、竹入さんにはぜひともお話をうかがいたいところです。

そして、長野と言えば……諏訪大社! そこに何があるのか、こちらは追ってのお楽しみ。


あり

こちらの射撃場には初めてうかがったんですが、建物もキレイで素敵な場所ですね。天気が悪くて本当に残念ですが、銃も持ってきたので、今日はどうぞよろしくお願いいたします! ところで、ここは長野の県営の射撃場ということですが、竹入さんは県の職員さんなんですか?

[竹入さん]

そうではなくて、県の指定管理者として長野県猟友会が委託を受けていて、この「長野県営総合射撃場」では地元の上伊那猟友会が再委託を受けて管理しているんです。で、私が長野県猟友会の副会長と、上伊那猟友会の会長をしていることで、ここの管理者になっています。晴れていると射台の向こうの景色が、実にキレイなんですけどねえ(笑。

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あり

それで、竹入さんはこちらで長く管理者を……?

[竹入さん]

いや、県の直営から指定管理者制度になって……8年くらいかな。その前から地元の猟友会として関わってはいたけど、もともと私が地元なんで、射撃場を作るときから……この射撃場ができたのが平成6年(1994年)で、もう20年になるんだけど、まあここでは常連だったわけですよ。

あり

わたし練習が大好きなので、関東はあちこちの射撃場に行っているんですが、ここのクラブハウス風な雰囲気というか……そのうちまたお世話になりたいと思います! ところで猟友会が委託を受けて管理している射撃場って、よくあることなんですか?

[竹入さん]

いや、あまりないんじゃないですかねえ……。指定管理者制度は宿泊施設などではよくありますが、そもそも射撃場では珍しいと思います。射撃という専門性から、その管理を委託する専門家としては、まあ猟友会くらいしかないんですけどね。それでも射撃場の全体は自治体が管理して、その中で猟友会が運営に参加するというケースが大半だと思います。

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あり

実は竹入さんについて、とにかく「すごく撃ってる人だ」とお聞きして、ワクワクしながら来たんです!

[竹入さん]

そんなに大して撃ってないけどなあ……動物を獲ることも好きだけど、そもそも銃を撃つことにとても興味があって、最初はただ引き金を引きたかった、ということだったんですよ。それでデタラメに撃ってた時期も、ただひたすら撃ち続けてた時期もあったんで、だからみんなが「異常に撃つヤツだ」と言うんだねえ。散弾銃から10年たってライフルの所持許可を取って、ライフルを買って最初に軽井沢の射撃場に行ったんだけど、そのときに400発の弾を持っていって、その全部を1回で撃ってきて……なんてことをするぐらい、撃つのが好きで。とにかく射撃はずっと、かなり続けていて、年間に3万発とか4万発とか……ま、そんなに上手にはならなかったけどね。

あり

……わたし、まだ銃を持ってからトータルで300発とか400発とか……。

[竹入さん]

銃身の耐久性は、いまは1万発くらいと言われているけど、30年や40年も前の銃だと1000発とか1500発とかで、いろんなところが壊れるわけですよ。それに、他の人は射撃練習でも間を取ってゆっくり撃つんだけど、私はせっかちなのかずっと撃ち続けてて、1回に300発とか400発とか撃っちゃうんで、銃身も壊れて、銃も壊れて……まあしょっちゅう壊れてましたね。新しい銃が買えるくらい修理費がかさんだり……年間で120万円とか、ね。

あり

えーっ! それ、かなりいい銃が選べますね。というよりも、300発も撃ったら熱くて持てないですよね?

[竹入さん]

最初のうちはあまりいい銃を買わないもので、余計に壊れるんだよね(笑。だから教えるときには「そういう撃ち方はよくない!」っていうんだけど……。途中で冷めるだけの間がないと、銃が壊れる前に引き金が落ちなくなったり、銃身が曲がったりするんです。機関部を含めて、引き金のあたりまで全部が熱で膨張してね。

あり

すごいなあ、ホントに。そもそもどうして狩猟の道に、というか、銃を手にされたんですか?

[竹入さん]

私の出身がこの近くの、60軒くらいの小さな集落だったんですが、そこでいまから50年くらい前、ウサギ狩りの獲物を集落に分けてくれた人たちがいてね。あの時代、このあたりにも職業猟師が何人もいて、分け前をくれるその人たちが、憧れの的だったわけですよ。たまにクマなんか獲れると何日も集落に吊るしてあって、みんなで見に行って「すごいなー!」とか、そんな話で持ちきりになるくらい。だから二十歳になったらすぐ鉄砲の所持許可を取ろう、すぐ撃とう、と思ってましたね。それで自分も猟師になろうと……まあ実際には猟師になったわけじゃなかったけど、あの人たちのような暮らし方で、みんなに尊敬されて、そういう風になりたいな、というのがきっかけでした。

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[竹入さん]

いまは猟場に向かう道では、もちろん銃に覆いをかけているわけですが、私の小さなころはその憧れの職業猟師たちが、平気で裸の銃を担いで歩いていたわけです。小学生が行き会うと「坊、テッポウ撃たせてやるか?」なんて時代があったんですよ(笑。そんなこともあって、私には銃が身近だったんですね。それが10歳くらいのときで、二十歳になって銃を手にして、それから50年、です。銃を持つようになって、憧れの職業猟師の人たちに教えてもらえたわけですが、まあ当時は「家を出るときは鉄砲に弾を詰め、山を一回りして、家に帰って玄関を開けたら弾を抜け」なんて言われたもんです。いまでは考えられないことだし、当時も自分はしませんでしたが、そんな感覚の職業猟師がこのあたりにもいて、そんな教え方があったんですよ。

そんな憧れから入ったので、最初は動物を獲る以前に、的に当たるとか当たらないとかより「とにかく撃ちたい」という気持ちでした。それからライフルになって、どこに行ってもライフルで撃つのが面白いという時期があって、それが獲る楽しさに変わっていった、という感じですかねえ。

あり

それから猟師を目指されたんですか?

[竹入さん]

いや、それで生活が成り立つほどの腕もなかったし、憧れてはいたけど職業としては難しいな、とね。それに職業猟師たちも、当時でもう残っていたのが3人くらいになってました。年も取って、なかなか獲れなくなって、仕事としての狩猟からは遠ざかって……でも撃つのは上手でしたけどね。それに、その人たちは鉄砲の腕前とは別にいろいろ知ってるわけで、教えてもらうには大切な人たちでした。

いまの私もクドいくらいに言ってるんだけど……単独で猟をするのであれ、集団でするのであれ、猟友会として若い人たちを集めていくのは根本の重要な課題です。でも、そこで基本になるのは経験を積んだ年長者の存在で、それがいないと、何かあったときどうにもならない。猟の最中に若い人たちが「年寄りの動きがノロい」とか文句を言うけど、でも若い人が山で迷って帰れなくなったとき、どこをどう進めばいいのか指示が出せるのは、そういう年長者だけなんです。だから、そんな年長の人たちを絶対に残しておいて……簡単に「若いもんに譲って」ということではなく、絶対にそこにいてもらって、なにもしなくていいから、ね。万が一の場合に適切な指示が出せない、やはり猟は危険だと思っています。無線で状況を聞いて「その先は落ちるぞ」とか「そこで引き返せ」とか「そこは絶対に行くな」とか、ね。

ところがそういう人たちは教え方も頑固で、猟の現場でも「そんなもんを逃がしやがって、家へ帰って、もう来んな!」みたいな言い方をするんで、みんなに嫌がられるんだね。でも、そんな頑固な話を50代くらいの人がいったん受けて、若い人にやんわり伝えてあげれば……50代の人たちは怒られて育ってきて、いまさら言われてもなんともないわけで、そういうクッションがあれば若い人たちも辞めずにすむんですよ。それが、若い人が入ってきて直接そんなことを言われると……撃って、外して、逃がして、それで「おめえ一人でも山に入って取って来い!」みたいな感覚だと、若い人が増えるのは難しいですね。

あり

あの……せっかくの射撃場なので練習を見てもらいたいと思って、銃を持ってきたのですが、お手柔らかにお願いできますか……?

[竹入さん]

あはは、大丈夫だよ! じゃあちょっと見せてもらいましょうか。天気が悪くてクレーも見えないかもしれないけどね(笑。


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あり

……というわけで、最近はスラッグ弾ばかりの練習だったので手持ちもなく、射撃場で散弾を買いました。銃を持って移動するだけでも緊張するし、公共交通機関には持ち込める実包の弾数制限もあるので、練習のときは射撃場で弾を買って、全部ちゃんと撃ってくるのが安心です。

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あり

そんな準備をしながらロビーを見学し、マナー心得の覚え書きに気を引き締めていたところ……彫刻も見事な水牛のスカルに「岐阜県 大野様寄贈」と! もちろん前回おじゃました、岐阜編の大野恵章さんです。なんでも竹入さんとは長年の友だち付き合いだとか。決して広くはない狩猟界ですが、やはりスゴい人はスゴい人とつながっているもんだなあ、とフムフム納得。

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あり

そして、準備も整ったところでいざ!射台へ。散弾での射撃は本当に久しぶりです。はてさて、当たるも八卦……竹入さんにアドバイスもいただいた射撃練習の様子は、次回をお楽しみに!


竹入正一さん

たけいり・まさかず。1944年生まれ。長野県猟友会副会長、上伊那猟友会会長。長野県営総合射撃場の管理者を務めるかたわら、年間3〜4万発という驚異的な弾数を撃ち続ける、まさに銃を抱いた70歳。