VOL.4

想いあふれる〈これから〉の狩猟者たち──「狩猟サミット」に行ってきました![番外編]

2014年11月25日

「目指せ!狩りガール」読者の皆さま、いつも応援ありがとうございます! さて〈教えて!狩猟の達人〉として岐阜、長野、徳島と全国を旅してきたシーズン2ですが、今回はベテラン狩猟者のインタビューではなく、10月の25日から27日にかけて静岡県は御殿場市、富士の裾野で開催された「狩猟サミット2014」をリポートします。昨年の岐阜県に続いて第2回となる今回も、全国からたくさんの若手狩猟者や、狩猟者を目指す人たち、そして心の若いベテランたち(!)が集まりました。
「あれ? 肝心の狩りガールは登場しないの?」と思った熱心な読者のあなたも、ご安心を! ありちゃんは取材とは別のカタチで参加して、最後にちゃんと登場します。


昨年の2013年、岐阜県郡上市で活動する里山保全組織「猪鹿庁」の主催で開催された第1回の「狩猟サミット」では、あふれる想いで狩猟の世界に飛び込んだ若手ハンターを中心に、現場での発見や悩み、人の暮らしと野生の鳥獣の現実と未来について、熱心な意見が交換されました。狩猟関連の各界からも、現役で活動中の講師が数多く招かれ、座学に留まらない実践的なワークショップが開催されました。それまでなかった貴重な学びと交流の場ができたわけです。

そして今年、集いの場を富士山麓に移して、第2回「狩猟サミット」が開催されました。200名に近い参加者の平均年齢は、なんと34歳という若さ。しかも、参加者のおよそ3分の1が女性と、まさに〈狩りガール〉たちの躍進を肌で感じるイベントでした。そして、皆さん本当に熱心で、積極的で、好奇心がすごい! 週末プラス月曜日という2泊3日のスケジュールでしたが、休みを調整して全日程に参加した人も多かったようです。

さて、そんな「狩猟サミット2014」のプログラムから、2日目の2ndクラス──この「目指せ!狩りガール」シーズン2でも第1回の岐阜編で登場していただいた「猪鹿庁」長官の興膳健太さんによる「猪鹿庁の作り方 〜地域で狩猟で食っていく〜」を、少しだけご紹介……。


猪鹿庁とは何か……それは、地域で狩猟で食っていく体制です。

猟師は里山の保全者であり、安心・安全な獣肉を届ける立場。天然の肉を美味しくいただくということから、私たちは本気で山を変えることができる。そのためにはカラダだけでなくアタマも使って、想いをカタチにしていくんです。

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「猪鹿庁」は、NPO法人「メタセコイアの森の仲間たち」の事業部のひとつとして活動する任意団体。その活動理念を「里山と生きる」と定義し、猟師の6次産業化による担い手の育成と、新しい鳥獣被害対策の提案・実践を活動の柱にしています。日々の活動のベースとして狩猟、解体、商品開発などに奮闘するかたわらで、猟師と行くエコツアーや山歩き&BBQ、解体ワークショップから「猪骨ラーメン作り」まで、さまざまなイベントを打ち出しています。また鳥獣被害対策支援では、使いやすく捕獲効率の高い箱わなを開発、製造して、それを近郊の農業者の皆さんに貸し出して設置し、獲物が入ったら回収に行くという事業モデルで、狩猟経験の少ない地域でも効果的な駆除対策を実践しています。このシステムを、興膳さんは「現場に血を残さない」と表現していました。まさに、狩猟者と非狩猟者の間にある──狩猟に縁のない人たちにとって、いちばん高いハードルが「血」の問題であることを、しっかりと捉えているわけです。

そんな活動の様子から話題に上ることも多く、とくに若手の狩猟者からは憧れの対象でもある「猪鹿庁」ですが(加えてイケメンぞろい!)実は今回のワークショップでは、120分間のセッションの多くの時間が「いかに食えないか」という現実的な説明に費やされていました。ここでは具体的な数字は差し控えますが、トークの中に登場したのは、すべて現実の金額としての「おカネ」の話。当初の目論見がくずれて立ち上げメンバーを卒業させざるを得なくなった初期の挫折から、やっと売上げが立ちはじめたころの安堵感など、興膳さんならではの「ぶっちゃけトーク」には勇気をもらった参加者も多かったと思いますが、他方では自分の考えていたビジョンの甘さを突きつけられて……という人がいたかもしれません。

フルタイムであれ、週末ハンターであれ、狩猟とは命をいただく行為にほかなりません。狩猟で生きる──それは覚悟のいることだ、という当たり前の話をもういちど思い出させてくれる、すばらしいプレゼンテーションでした。


そのほかのワークショップでは、さまざまなテーマが展開されました。その一部をご紹介すると……

「新米猟師のためのはじめての獲物 ステップbyステップ」
──瀬戸祐介さん(猪鹿庁)
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「森の恵みを暮らしに活かす 〜女性狩猟者ネットワークの取組み〜」
──八代田千鶴さん(縁鹿小町)
──松浦友紀子さん(TWIN)

「鹿革クラフトワークショップ」
──遠藤和帆さん(染織工房豆)
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「どうなるチョージューホゴ法の中身? 法改正と現場の取組みを考える」
──伊吾田宏正さん(酪農学園大学狩猟管理学研究室)

「プロの美味しいシカの調理法」
──石崎英治さん(伝統肉協会)
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「生活の一部としての狩猟 〜趣味でも職業でもない自然との関わり〜」
──千松信也さん(リトルモア/新潮文庫『ぼくは猟師になった』著者)

……などなど、実技ノウハウからクラフト、法律、料理、ライフスタイルまで、本当にバラエティにあふれる内容でした。


あり

はい、お待たせしました! 今回は〈狩りガール〉誰も登場しないの?と思ってた皆さん、そうはいきませんよ〜。実はこの「狩猟サミット」では、たくさんの参加者の方々とお会いして、ご紹介したいものがあったんです。それは……

コミック書影

あり

ジャジャ〜ン! なんと「目指せ!狩りガール」がコミックになりました! それを皆さんに知っていただきたくて、会場を走り回っていたんです(笑。著者には、なんとわたしの名前が……! もちろんはじめての本です。そりゃそうです、ふだんはフツーの会社員ですから。で、まんがを描いてくれたのが、シーズン1からイラストを担当してくれている新岡薫さん。そして、このお話がコミックになる道をひらいてくれた編集担当の高橋藍さんと3人で、しっかり「10分プレゼン」でアピールしてきました! もちろん、読者の皆さんにも懐かしのだいぞう師匠にお願いして、大日本猟友会の監修もしっかりいただきました。そして、そして……

“あの味”が忘れられず、私もハンターになりました。
楽しく知って、美味しくいただく。それが自然にも良いなんて!
──女優・杏さん

あり

TVに、ラジオに、映画に大活躍で大忙しの杏ちゃんが、応援のメッセージを書いてくれたんです! そこでも書かれているように、杏ちゃんは今年、狩猟免許を取りました。いつかいっしょに狩りに行くのが楽しみです。さらに、さらに……

全国の山と森を愛する
〈狩りガール〉の活躍に期待しています!
──大日本猟友会 会長・佐々木洋平さん

あり

なんと、大日本猟友会の会長である佐々木さんからも、激励のおことばをいただきました! 皆さん、ぜひぜひ読んでくださいね! そしていつの日か、いっしょに狩りに行きましょう! ではまた、次回!


『狩りガールが旅するおいしいのはじまり 山のごちそうをいただきます!』
2014年11月20日発売/講談社、1300円(税別)

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