Vol.3
実猟レポート その1
まだ発砲はできていませんが……。
今年の猟期がスタートして約1カ月。
今のところチームの巻き狩りに4回出猟して、発砲チャンスはありません。
チームとしては獲物は毎回獲れていて、おすそ分けにあずかった私としては、狩猟シーズン前半にして、早くも家の冷凍庫があふれそうです。
今回はこれまでの猟の様子をお届けします。
猟の日の朝はとても早いので、前日はお酒もほどほどに早く寝ます。
その結果、猟期中は週末の過ごし方がいつもより健康的になるんですよね。
私が猟場に到着するころには、先輩たちが〈見切り〉をしてくれています。そこから動物たちの動きを予測して、巻き狩りを行う場所や犬を放す場所や射手の配置〈タツマ〉を決定します。
巻き狩り・見切り・タツマの説明は、「はじめよう!狩りガール」へ
いつも私は射手担当ですが、ある日のタツマは、こんなところでした。
タツマに着いたら、まずはどこに座るか考えます。
タツマはだいたいスジ(けものが通る道=けもの道)が何本か見える場所にあります。このスジから獲物が来たら、あのスジから来たら、とシミュレーションをして、見通しが良く、獲物からは目立たなく、さらに射撃体勢も取りやすい位置にお尻を置きます。
座ってからもスジに向かって何度も射撃姿勢を取って練習。
新米ハンターの私は、この練習をして心の準備をしておかないと、獲物が出てきてもとっさに対応できないのです。
(昨年の猟期はこの準備が甘くて、獲物が出ても撃てなかったことがありました……)
射手全員がそれぞれのタツマについたら、巻き狩りのスタートです。
片方の耳のイヤホンで無線を聞きながら、もう片方では周囲の音に耳を傾けて静かに待ちます。
木から水滴が落ちる音、風の音、遠くを飛ぶ鳥の声……。
普段は耳に入らないような音が、ひとつひとつ、とても鮮明です。
そして時々ふと、蟻の足音すら聞こえそうなほどの静寂につつまれる時があり、まるで自分が山と同化したような気分になります。
今年の初イノシシが獲れました!
先輩ハンターさんが仕留めたこのイノシシは、だいたい100㎏くらいでしょうか。猟期に入って3週目での初イノシシとなり、みんな大喜び。
先輩は「犬がイノシシの臭いを忘れてしまったのかと思って心配していたんだよ」と笑っていましたが、そんなことはありませんでしたよ。みんな、がんばってくれました。ありがとう!
山の神に感謝しつつ、一息ついたのも束の間、そこからイノシシを運びだすのに約3時間。運動会の綱引き状態で、みんなで声をかけ合いながら、20代〜80代のチーム全員で大切なイノシシを引っ張りました。
猟師小屋に戻ったころには、もう日も暮れていて……。
ここから解体です。私のチームでは、内臓もできるかぎり大切にいただきます。
腸を切り開いて洗っていると、黒い殻がたくさん出てきました。
よく見ると……あ!ドングリの殻!!
本当にこのイノシシはたくさんドングリ食べていたのだなあ、と。
ドングリを食べると内臓がそのアクで黒くなるので、腹を開いて見ただけでドングリを食べていたことが先輩には分かるのだそうです。
そんなイノシシの肉には、真っ白な脂がたっぷり。美味しそう!
赤身肉派になりつつある私でも、イノシシの脂は別格!
イノシシの脂は、しつこくなく、部位によってはシャリシャリとした歯ごたえがあり、本当に味わい深くて大好きです。
冬に備えてドングリをたっぷり食べたこのイノシシ、どんな味がするのか楽しみです。
年末年始にかけて友人や家族と集まる機会も増えるので、みんなにもたくさん振る舞いたい!と思います。