カリタローだワン。ついにハンターデビューをしたありちゃん。ここまでよくがんばったね!狩りガールの活動はこれからも続くけれど、約1年間お届けしてきた連載はここでひと区切りなんだワン。そこで、これまでを振り返りながら、ありちゃんの気持ちを聞いてみたよ。
やっと「狩りガール」だね。おめでとう。
もう、皆さんのおかげです。去年の今頃なんて、まさか自分が狩猟をするなんて想像していなかったもん。ただ、お店で食べたシカ肉がおいしいな〜って思ってた(笑)。
そのシカ肉の「おいしいのはじまり」を知りたかったんだよね。
そうです!お米も野菜もお肉も。食材がどこから来て、どうやっておいしい料理になるのか実感したくて。それがはじまりですね。ただの食いしん坊なんですけど(笑)。
「狩猟をしよう」と思い立ってから一年弱たったけれど、実際に行動を起こしてみてどうだった?
それはもう……とにかく手続きが大変だった!窓口となる所は平日受付が多いので、仕事の休みを取ったり、時間を作るのも一苦労でした。
何度もケーサツや病院に行ってたワン。
だよね!特に大変だったのが、猟銃を持つための所持許可をもらう手続き。この許可のために、警察には6回も行きましたよ。まぁ、正直面倒だったけど、一段階ずつ進みながら心の準備をして行けたのは良かったのかな〜。
日本で銃を持つことがいかに簡単じゃないか実感したね。猟銃を手にすることってどう思ってた?
狩猟には挑戦してみたかったけど、猟銃を持つことに関してはとにかく不安でした。手元に置いて良いものか?って。狩猟の時だけレンタルできればいいのに〜って思っていました。でもその不安って、銃に対する知識が無かったからなんです。
今は違うよね。
だいぞう師匠や猟友会の先輩方のお話を聞いたり、射撃練習をして気持ちが変わりました。自分の手で分解して構造を習って、事故を避けて安全に扱うためにどうすればいいかを理解したら、むやみに怖がる必要がないってわかった。
想像だけで怖がるのと、理解して具体的にイメージできるのは違うから。
はい。猟友会の方に「できるだけ慣れろ」とアドバイスをもらって、普段から手入れして構える練習をするようにしています。慣れることが安全に繋がるんですよね。
手になじむと気持ちに余裕も生まれるし。
とはいえ、周囲の人が感じる不安もわかる。だから日々、最大限気をつかっていきたいです。
初めての狩猟旅では猟友会の先輩に借りた手持ちのケースを使用。「これでも銃が入っているようには見えないけれど、もっと女性らしくて中身がわからないケースを見つけたいな」。
実猟に出るまでもいろいろ見学してきたね。ハンターのイメージも変わったかな?
それはもう!これまではクマが出た時にテレビで見かける存在だったけれど、実際に先輩ハンターたちのお話を聞けたのはとっても後押しになりました。もっと猟友会の方々に教わりたいです。
いまや大先輩の皆さんも、かつては師匠について教わったんだ。師匠から弟子へ、受け継がれる知識と経験はありちゃんにとっても必要なことだね。
最近、ハンターさんが減っていると言われていますよね。ハンターさんの年齢も高齢化してきているので、大切な師匠と弟子の関係がちゃんと受け継がれていけるのか心配になります。
確かに。ただ、ありちゃんの行く先々で、ハンターになりたい人や新人ハンターのお友達ができていたでしょう。その様子を見ているとまだまだ興味を持ってくれる若者がいるんだ!って思えて心強かったよ。
狩りガールや狩りガール見習いの皆さんが何人もいたね。思ったより女の子が多かったワン!
そう!狩りガール仲間もできました。その仲間たちと、とにかく猟友会のおじさんたちが楽しそうなのがいいよね〜って話していたの。射撃の練習をしている時も、獲物をいただく鍋を囲んでいる時も。あの様子を見て、「狩猟って楽しいものなんだ」って思えた。
うん、皆さん怖そうな顔をしているかもしれないけれど(笑)、とてもフレンドリーだからね。
うふふ(だいぞう師匠もね)。狩猟の現場ではもちろん、射撃場や銃砲店など、さまざまな場所で先輩たちに助けられていると思いました。猟友会の方々との深いお付き合いが、ハンターとしての成長に繋がるな〜って感じています。
最初の頃の不安はだいぶ無くなったみたいだワン。
そりゃ、まだまだわからないことだらけだし、来期の狩猟シーズンだってドキドキだと思うけどね。出会ったハンターさんたちがみーんな優しくて、「困ったことがあったら相談においで」って言ってくれているので安心なんだ。
お互いに助け合うのがハンター仲間だからね。
狩猟小屋での楽しいひとときも体験したありちゃん。地図の読み方も教えてもらわないとね!
ありちゃんはどんな狩猟をしてみたいの?
狩猟といっても「巻き狩り」や「流し猟」とかいろいろあることがわかったじゃない?
「巻き狩り」は地域によってもやり方が違うね。
はい、いろんな狩猟を経験してみたいです。銃猟だけじゃなく、わな猟も。きっと全然違うんだろうなって思うと、一人前に近づくために、たくさんのことを学んで挑戦したい!
それなら、もっともっと先輩たちに会わないとね。地域独特の知恵、ハンターそれぞれに独自の技術やノウハウがあるんだよ。
そうですね!ベテランの方はもちろん、もっともっと先輩女性ハンターにもお話を聞いてみたいです。
日本には素晴らしいハンターが男女ともにいるからね。よし、今度一緒に訪ねよう!狩猟についての思いや技術、長年続けてきてわかった極意なんかも聞けるかもしれない。
技術と言えば……、今回実際に狩猟をしてみて、獲物を見つけるコツをもっと身につけたいと実感しました。いつもワタシだけシカを見つけられなかったのがくやしくて。そしておいしいお肉を食べるために射撃の腕も上げて、ちゃんと仕留められるようになりたい。
それは大切なことだね。獲物を見つける技術、獲る技術を身につけていこう。
解体ももっと上手になりたいし、狩猟肉のおいしい料理をもっと振る舞いたい。皮や角の活用も考えたい。ああそれと、女性にも似合う狩猟ベストが欲しいし、ガンロッカーもかわいくデコレーションしたいっ!
もりだくさん!ありちゃんの野望が止まらないワン。
うん!こんなに魅力的で有意義な世界だとは思っていなかったからね。
今ありちゃんが魅力に思っていることを、狩猟に興味のある人たちに教えていってほしいな。
はい!そして一緒に活動できる仲間を増やしたいです。
ボクも早く猟犬デビューしたい!ありちゃんと一緒に狩猟に行きたいワンっ!
狩りガールを目指した1年、本当によくがんばったね。素敵な新人ハンターが誕生してくれたことを、私もうれしく思うよ。今後は、私もいちハンター仲間として、ありちゃんを応援しよう!
だいぞう師匠とカリタローがいてくれたから、ここまでがんばれました。本当にありがとう!!これからも末永くよろしくお願いします!
ワンワン!
ありちゃんの初獲物でお友達をもてなしたパーティーでは、今までの活動で使った狩猟アイテムをディスプレイしてみました。
連載の最後に、狩りガールのスタートラインに立ったありちゃんのメッセージをお届けします。
今までワタシの挑戦を見届けてくれてありがとうございます!
狩猟のことは何にも知らない東京に住むOLが、本当に狩猟デビューする日が来るなんて。
自分でも驚きです。
仕事をしながら手続きや勉強を進めるのは大変でした。でも、試験の会場で仲間ができたり、新しいことを知るのは本当に楽しかったです。何より、出会うハンターさんたちみんなが狩猟のことを楽しそうに語ってくれたので、ドキドキがワクワクに変わっていきました。毎回出会う人、見学することがぜーんぶ面白かったです。
初めての射撃では腕が疲れて大変だったね。「でもこの経験で銃に対する心構えができました!」
いろんな経験が出来ましたが、一番の感動は北海道でのエゾシカ猟です。初めての狩猟。獲物と一対一で向き合うことは想像以上の体験でした。出会ったシカを撃つことはすべて自分の責任で行われます。ものすごい緊張感の中で狩る側も狩られる側も必死でした。
命を奪うことは本当に壮絶で、今まで味わったことのない熱い感情が込み上げて来たんです。目の前の命に対する可愛そうと思う気持ち、反して獲物を手に入れた喜びと高揚感。忘れられません。相反する気持ちの中、自分で獲ったシカがとても大切に思えました。
自分の獲物を無駄なく、おいしく食べたいと思う気持ちが自然に湧いて来たんです。
そして本当においしかった!獲物への感謝があふれます。
雪の中を歩いてエゾシカに出会って。
すぐに食べ物が手に入る今の日本で、どうして狩猟肉を食べるの?と聞かれることがあります。その一番の理由はおいしいから。狩猟肉にしかない味わいがあるからです。また、このお肉はどこから来たのかな?と想像も広がります。これは今まで食べてきたお肉では考えなかったこと。狩猟する時の緊張感と仕留めた時の感情、そんな複雑な心境を越えて食べる喜びがある。この体験を通して、狩猟に挑戦して本当に良かったと思いました。
大好きなお肉が食卓に上がるまでを体験。「お肉って本当にごちそうです!」
狩りガールを目指すことは、やっぱり簡単ではありませんでした。
自分で思うより、心と体力と時間を費やします。引き金を引く勇気と責任感も必要だと思いました。周囲の理解と協力も必要ですね。
これから狩りガールを目指す方には、猟友会や銃砲店、試験会場で先輩や仲間と繋がって、情報を集めることをオススメします。狩猟といってもスタイルや付き合い方はさまざまです。これからワタシも、先輩ハンターさんに連れて行ってもらいながら自分に合った手法を見つけて行きたいと思います。
最後に、今回たくさんの方々のご協力と理解のおかげで「狩りガール」になることができました。この場を借りて、家族、友達、同僚の方々、関係者の皆さまに心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
この連載が、少しでも狩猟に興味を持つきっかけ、食べることを考えるきっかけになればうれしいです。
私の狩りガール人生はまだまだこれから!
いつか「狩りばあさん」になれるように、これからも続けていきたいと思います。
大日本猟友会・目指せ!狩りガール スタッフ一同